森達也「私たちはどこから来て、どこへ行くかー生粋の文系が模索するサイエンスの最先端ー」ちくま文庫(2020年)

森達也さんという人は映画監督で作家らしい。映画も見たことないし、本も読んだことがなかった。これは文系の彼が科学の最先端の研究者たちとの語らいをつづった本。研究者たちのラインナップにひかれて読むことにした。今から5年ほど前、雑誌に連載されていた話をまとめたものらしい。モノを知らない者には最先端が5年位ずれていても最新には変わらない。一番心に残った、団まりなさんがもうお亡くなりになっていた。細胞の意思という話は面白かった。自分が女性だからかもしれないが、彼女の話が一番スッとふにおちた。科学の最先端に行けば行くほど話は哲学的になる。宇宙を突き詰めていくと、最小のものに当たる。最大が最小で、ミクロがマクロに繋がっていく。知れば知るほど、分からないことばかりだと知る。結局、細胞たちが生まれて死にゆくように、私たちもやがて死ぬ。遺伝子を残す残さないも大きな生命力の流れから見れば大した話ではない。残した遺伝子でさえやがて次の遺伝子と重なり、やがて消えていく。自分たちがどこから来てどこに消えていくかを考えると、日常の些末なことに一喜一憂してしなくてもよくなる。同時に一喜一憂することに生命の醍醐味も感じられる。日常こそ尊いのよね。命あるうちに。さあ。参りましょう。