ドライブ・マイ・カー(2021年)

やっと見に行くことができた。見られて良かった。3時間の長尺だが、もう一回見たい気もする。主演は西島秀俊。演劇の役者兼演出家の家福さんを演ずる。愛車サアブは赤くて多摩ナンバー。車が終始登場するこの映画、赤いサアブも重要な出演者だ。その車を運転してくれる運転手が現れ、家福さんは自分の車を運転してもらうことになる。話は面白い、ゆっくり丁寧に進む。映画の中に演劇があって、入れ子になった演劇がやがて外側の人間を覆い尽くす。ドライバーのミサキ、亡くなってしまう奥さんの音、音を知る若手俳優、そして家福さん。4人が奏でる演奏がどんどん高まり重なりクライマックスへと導く。カンヌ映画祭でたくさん賞を取ったらしい。脚本が特に素晴らしい。韓国手話の女優さんや、ミサキが連れて行ったゴミ処理場やら、映画の小道具が洒落ていて、そこから想像が広がる。向き合うべき課題に向き合い、苦しみ悲しみ、そして終わる。やがて死んでいく私たちそれぞれがこの瞬間に向き合うべき苦痛から避けられないこと。痛みを静かに受け止めること。映画は言っていたのかなあ。悲しみを抱え生きることから、始まる世界の可能性を告げているのか。すべてひっくるめて生きるというとらえようのない世界を受け止めろと囁いたのか。うまく言葉にはならないが。映画は素晴らしい。それは確かだ。