佐藤愛子「九十八歳。戦いやまず 日は暮れず」小学館(2021年)

話題の本だったが、手に取ったのは初めて。佐藤愛子さんは今年で98歳なんだ。まさに生涯現役。女性セブンに連載しているものをまとめたらしい。字が大きい。98歳になろうとする作家の語る話はリアリティがある。老いを恐れてジタバタする時代もとっくに過ぎてしまったのだろう。面白い。前向きに生きるなんて、もはや意識にも登らないらしい。そもそも前向きに生きることは、誰かに強いられることではないし。ごもっとも。前向きポジティブ病は全くの大きなお世話で、メディアの勝手な期待に付き合う必要はない。それにそんな余裕もないらしい。1日ぼーっとしているか、この間のBSの養老孟司さんだって、結構ぼんやりしていた。筋トレしたり、フルマラソンしている高齢者の方が例外的なのだね。良寛の言葉を引用していたが、災いに遭うときに遭い、死ぬ時には死ぬのだから。とはいえ、こういう本を読んでしまう自分も、どこか前向きで元気な高齢者を望んでいるのだろう。自分もそうありたいと、どこか思っているらしい。本当に人間は、勝手なものだ。自由に生きて死ぬこと。なかなか難しそうだ。