日高敏隆「動物にとって社会とはなにか」講談社学術文庫(昭和52年初版)

最初に読んだのは大学生の頃、一般教養の時間だった。昭和40年に出された本が52年に文庫本になって出てしばらくたってからだった。今からは半世紀以上前の本になる。学生の頃は「生物」に興味がなかった。人生は皮肉なもので、その後「生物学」を学ばねばならず、その時唯一生物関係で思い出すことが出来たのがこの本だった。当時の私は、「種」の定義をこの本に教えて貰った。内容はすっかり忘れていたから、今回も面白く読んだ。作者は2009年にお亡くなりになっている。最後に、「ヒト」という種について書かれている。種の人口抑制機能という本能を失っているヒトは、戦争で人口を減らしてきた。きっかけはどうであれ結果として人口を減らすことに成功してきた。疫病が蔓延して、次は戦争。ヒトは増え過ぎた人口を減らす時期に来ているようだ。オオカミという天敵を失ったシカが山の草を食べ尽くすように、ヒトは地球をどんどん禿山にしている。シカがやがて食べる草が無くなって餓死するように、私達も死へと向かっている。ロシアによるウクライナへの攻撃はその線上の話なのだろうか。毎日の報道に慣れていく自分がいる。そしてまた春が来ている。