今西錦司「生物の世界」講談社文庫(昭和47年初版)

生物学界のレジェンド今西錦司先生を読んだ。名前だけで実際のところは今西先生のことは良く知らないのだが、読んでみてその偉大さの片鱗には触れた気がした。とはいえ、私には難解な部分も多く、これまた読み進めるのに難儀した。それでも何とか読み終えて、解説を読んだら、なるほど、頭のいい人に説明してもらうとよくわかる。これは哲学で生物学なのだ。物の見方、考え方を示した上で、生物の世界を見ているのだ。自然淘汰や、突然変異など突きつめて考えたことがなかったが、レジェンドの言うとおり、突きつめていくと、納得がいかない。おかしい。この本は作者が第二次世界大戦に招集される前に「遺書」として書いているらしい。幸運なことに、作者は戦後も活躍し、偉大な生物学者となった。そして今、私達は破壊と殺戮を毎日映像で見ている。対岸の火事のように見えても、物価高騰という分かりやすい危機となって私たちの足元にも影響はきている。地球というひとつの世界の中で、最上位にたつヒトが殺し合っている。これは宿命的なことなのだろうか。地球のすべてはひとつの細胞から生まれたとするならば。私達に殺し合う必然はないような気がする。動き出した歯車を止める答えはまだ誰も知らない。暴力の歯車はますます加速していく。