アガサ・クリスティ 加島祥造訳「物言わぬ証人」ハヤカワミステリ文庫(昭和52年)

冬はミステリー。どこにも出かけず暖かい部屋で、あまり難解ではないアガサ・クリスティを読む。アガサ・クリスティは昔から好きで、この本も中学生のときに買ったものだ。あれから驚くほどの時間が過ぎた。そして、この年末年始もゆっくりミステリーと思っていた矢先にインフルエンザに罹患。ミステリーも読まず発熱の世界をさまよっていた。人生が長くなると楽しいこともつらいことも、過ぎてしまえば同じであることだと思い始めた。過ぎてしまえばあっと言う間で、過ぎた年月の大きさに驚いてしまうが、だんだんそれも大したことではないと思ってしまう。いつの間にか、私たちの暮らす世界はとんでも世界になっているのに、大人のくせにどうしていいのか全く分からない。世界が、こんなにイビツになるなんて、想像もしていなかったが、絶望し過ぎることもない。鈍感力はめざましく、それほど自分は年をとってしまったのだ。物価は上がり。賃金は下がり、疫病は続いて、戦争も終わりがみえない。正念場である。今年も周りに引き回されることなく粛々と生きていきたい。いつか死ぬ私のために、今日の私が出来ることはそれだけだ。