橋本治「青春つーのはなに?」集英社文庫(1991年)

今回の橋本治は前半が難解だった。途中から理解することを諦めたら、やはり橋本治はいいなあと思った。巻末の解説の中野翠さんを読んだ。なんだ、わかんないのは、私だけじゃないんだと知り、橋本治がまた好きになった。彼の本は、どこに連れて行かれるのかが分からないミステリーツアー。怖ろしく頭の回転の早いオネエ様が毒舌だけど優しく案内してくれる。スリリングで難解で、軽快で深遠で、子どもっぽいけど、大人の自由を感じさせてくれる。それにしても周りを見回してみても、本物の大人なんて、そもそもいやしないね。皆、子どもが歳をとっただけ。老いた少年少女のひとりの私も最近は、言葉に意識が低い人が耐えられなくなった。そういう自身も語彙も少なく、文章も月並みなんだから余計なのだ。豊かな言葉世界に憧れ過ぎて、橋本治推しなのだ。言葉を失った今の私たちは、説明責任を果たしてもらうこともなく、果たすこともなく、なし崩しで税金使い果たしてしまいそうだ。環境に優しくしすぎてコンビニのコーヒーばかり飲んでいる。早く言葉を取り戻さなければ。奪われたことさえ気づかないまま。大切なものを私たちは着実に失いつつある。