溢れる色彩。なんとも言えない強烈なパワー、どこまでもフラットな心。不思議な満足感を得て会場を出た。一度では堪能しきれない。休日の混雑を避けて早めに来た。お隣りのCLAMP展は相変わらずの人気ぶりで、列が大蛇のように館内を這う。田名網敬一展の混雑具合は、それほどではなく、程よくゆったり楽しめた。作品の量は桁違いに多い。1枚1枚見つめていると終わらないから何度来ても楽しめそう。初期の版画もカッチョいいが、ピカソシリーズが気に入った。コロナ禍中に始めた模写からの大作品群、ピカソと田名網さんが渾然一体となった絵が部屋全面に現れると、なぜだか嬉しくなって笑みがこぼれた。戦争で焼けた街の赤茶色の土と真っ青な空のコントラストが彼の作品の底辺にあるらしい。たくさんの記憶が幾重にも貼り付けられたコラージュということなのか。後半の作品は田名網さんの脳内を見ているようだった。展覧会の直前まで田名網さんはご存命だったこともあって、あの部屋のどこかを浮遊して、見に来た人を見ている気がした。溢れる自由と、戦闘機もマリリンモンローも、秘密のアッコちゃんも皆同一に並ぶ感覚。いいなあと思う。何ものにも囚われない自由とフェアな魂の世界に触れた気がした。やっぱりアートはいいなぁ~。解放されるわ。