中平卓馬 火 氾濫 国立近代美術館

予定がなくなり、竹橋で時間が出来たので、見に行くことにした写真展。亡くなって9年ほど経つ中平卓馬さんという写真家の回顧展。予備知識ゼロで、名前さえ知らずに入ったら、モノクロでピンボケか、アートなのか、よくわからない写真が一杯だった。これが氾濫なのか。火なのだろうか。雑誌がたくさん並んでいたのは、中平さんが雑誌の編集者から写真家になった人だったからだ。前半はモノクロの挑発的な作品が並び、後半はカラーのしっかりした作品になる。激変したのは中平さんが昏倒したせいらしい。彼に何が起こったのか、思想の流れがどう転換したか、私にはわからなかった。ただ、写真と文字が一緒になって、何か強烈なメッセージを発していたのだろうと想像する。雑誌の時代だったし、彼も時代を牽引する人のひとりだったのだろう。社会に物申すことが大切で、強く心を揺さぶるものが芸術だとあの頃は思っていた。今はそんな風には思わない。もう少し静かで地に足がついているものにひかれる。奇しくも中平さんの写真もそんな変遷かと勝手に想像しながら写真展を見た。最後の方にビデオの展示があった。顔をくしゃくしゃにしながら楽しそうに写真を撮っていた中平さんがいた。なんかいいなぁ~と思った。私もこんな笑顔で行きたいなあと思う。