宮澤賢治「新編 銀河鉄道の夜」新潮文庫(1989年初版)

読むものがなくなったので、無料の電子書籍を読んだ。少し前に宮沢賢治の故郷岩手県にも行ったし、アニメや映画で読んだ気になっていたけど、宮沢賢治の本をちゃんと読んだことなかったし。「銀河鉄道の夜」は、ジョバンニとカンパネルラのふたりの子どもが電車に乗って旅をする。銀河をゆく列車は不思議な出会いと幻想的な風景を繰り広げていく。やがて列車から降り、現実に戻ると、ジョバンニはカンパネルラの死に出会う。カンパネルラは誰かを助けて川に飛び込んでいた。若い頃は賢治の口調が読みにくくて途中で投げ出していた。今も読みにくいが、この読みづらさがかえって想像力を喚起しているのかもしれない。岩手に宮澤賢治の童話村なる場所があった。メルヘン感は苦手なのでゆっくり見なかった。人工物が多すぎたせいかもしれない。感性の鋭い子どもたちや、豊かな感受性を持った人なら、小さな草むらひとつで賢治の世界に行けるはず。でも、あそこで星空眺めたらいいだろうな。今ならそう思える。ソフトで優しいイメージの宮澤賢治だが、実際読むと柔和ではなく、迫りくる激しい沈黙のようなものを感じる。優しい声や楽しい音ばかりに踊らされているといけないね。怖いところに連れて行かれちゃうね。ちゃんと耳を澄ませて、目を見開いて、悪い奴らに勝手をさせてはいけない。