瀬戸内寂聴「私の京都 小説の旅」新潮文庫(平成7年初版)

昨年お亡くなりになった瀬戸内寂聴さんを読む。生前はほとんど読んでいなかった。一冊だけ読んだ本がなまめかしかった記憶がありずっと遠ざかったいた。ちょうど今年はお正月過ぎに京都を訪れたこともあり、気分新たに手に取った。この本は、作者が京都を舞台にした小説の一部を切り取って、京都の名所を紹介していく本である。どのエピソードも妙齢の女性が出てきて、京都の風景と、最近は言わなくなった女の業とを呼応させている。時々、作者が使う言葉は難しくてスッと読めない。スマホで意味を確認するとなるほどと思う。語彙の豊かさが教養の厚み。ペラペラに生きてきてしまった。読み終わったらまた京都に行きたくなった。彼女の別の作品も読んでみたいと思った。昔のことをいつまでもこだわることもない。こだわるにも体力がいる。最近はこだわりもそうだが、いい事も悪い事もなんやかんや忘れていく。どんどん薄らいでいく。日々入れ替わる細胞のように、私自身もどんどん変わってきている。大人も後半戦、振りむいている時間はもうない。前進あるのみ。