エマニュエル・トッド 訳者:大野舞「大分断 教育がもたらす新たな階級化社会」PHP新書(2020年初版)

フランス人の歴史人口学者の有名人、エマニュエル・トッドさんの本。コロナの第一波がおさまった頃に出された。高等教育が人々を階層化させ、エリートと大衆の分断が起こったという話から、トランプ政権、EUドイツのこと、日本のこと、特に今のフランスのことについて詳しく書かれている。以前に聞いた、家族形態から民族の歴史を紐解いていく話は目から鱗の面白さだった。その時の感動が大きかったせいか、この本の読みごたえはいまいち。翻訳の特有の語り口調のせいか、はたまたこの本が寄せ集めの薄い本のせいかはわからない。トッドさんによると、民主主義は教育レベルが均一な時に最大の力を発揮するらしい。確かに教育レベルがバラバラになった今の社会は民主主義は機能していないのかも。あんなにダメな安倍政権から、これまたダメそうな菅政権。日本のお利口さんたちはもう政治家なんかにならないんだね。みんな優良企業で高給を貰って、自分の子どもたちに十分な教育を受けさせて、階層を維持する。私がお利口さんなら、私だってそうする。そうして我が国日本は少子化が一段と進み、移民は入れず、世界一の超高齢社会となる。ゆえに人口減少弱体化はいたし方ない。エリートたちはどんどん無能になって、大衆は搾取され続け暴れだす。これが今のフランス。日本人も、もっと怒って暴れてもいいはずだが、力も気力も不足気味。そういう私もおとなしい。トッドさんの予想通り、日本の分断がフランスほど進まないといいのだが。実際のところ、溝はすでに深く、見通しはどこまでも暗いのかもしれない。とりあえず悲観していると少し安心だ。