井上靖「後白河院」筑摩書房(昭和47年初版)

井上靖の本を今頃好きになって読んだ。私が良さを理解するのにはこのくらいの年齢が必要だったということだ。重厚なドラマも丁寧な語り口で滑らかに落ちていくから不思議。「後白河院」は4章からなり、周りにいる人たちが、語り部となり、それぞれの目線で院を語る。歴史好きならともかく、一般人にはなかなか難しい言葉が一杯。旧字体も多いので今回もスマホが大活躍。読み進めながら記憶に残っている大河ドラマのキャストを思い出していた。清盛は渡哲也だったり、松山ケンイチだったり。頼朝は岡田将生義経滝沢秀明後白河院平幹二郎かなあ。50年前の単行本だが、ケース入りだったので日にも焼けずきれいなまま。当時950円で販売、今なら3000円?。後白河院のいた時代は歴史の転換期。秩序が乱れて、落ち着かない雰囲気は、今の時代と少し似ている気がする。時代に翻弄されるというか、節操なく考えを変えて、身を処していく後白河院は、したたかというか図々しい。ただ、今言った言葉もすぐに忘れてしまうような人の方が混乱の時代を生き残るのかもね。今の時代もそんな感じだし。