岩波文庫の『富嶽三十六景』のあとに読んだせいだと思う。少しがっかりした。読者への心くばりが足らないと感じた。ページ表記はなぜあの位置なのだろうか。中央にあって見づらい。でも1番の問題は英訳。日本語の説明の逐語訳になっていて、無闇に長くて、ページのバランスが悪い。英語は日本語を訳するのではなく、独立した解説にすれば、もう少しは簡潔になったかも。でなければ英語で別冊を作ればいいのに。解説の説明部分では、北斎が参考にしたであろう文献本の絵を入れていて、岩波文庫のものよりいいのだけど、総じてすみだ北斎美術館のお役所的な本という感じがした。北斎の時代は庶民のパワーが開花していた時代かもしれない。私たちも今こそそれを思い出すべきなのかもしれない。大事なのはひとりひとり。組織を守るために個人が犠牲になる社会が少しでも減りますように。この本は学芸員さんの名前で出せばよかったのにと思うし。こんな本にはならなかったのではないかしら。