ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟1~5」亀山郁夫訳 光文社古典新訳文庫(2006)

人生で初めてのドストエフスキー。ようやく全5巻を読み終えた。マラソンでも走ったかのような達成感。読んでいる間は、濃密で緻密な話に、ドストエフスキーを生んだロシアの大地に思いを馳せた。ウクライナとの戦争が始まって、ロシアのことを知りたくて読んだのだが、ロシアは遠く大きい。読み終えて初めて知ったが、このお話は未完だそうだ。この5巻が第一部で、第二部が予定されていたのだが、ドストエフスキーが第一部が世に出るとすぐ、60歳で亡くなってしまった。光文社文庫には各巻末に翻訳の亀山郁夫さんの解説がついている。最後の5巻目には、長い全体の解説がある。張り巡らされた伏線や隠された意図、書かれるはずだった第二部の話などをしっかり載せてあり、読後、この物語を一層大きく膨らませてくれている。父殺しのテーマから革命に至る話まで、解説がなければ私には想像もつかなかった。再読したらまた面白そうだが、今は無理だ。それにしても作者の筆力は強く重く深い。圧倒されたが、ほんの少しだが、ロシアの何かに触れた気もした。1日も早く戦火が消え、両国に平和が、訪れることを心から祈る。