読書

「我等、同じ船に乗り 心に残る物語ー日本文学秀作選 桐野夏生編」 文春文庫(2009年)

桐野夏生が選んだ日本近代文学の短編集。東電OL事件の「グロテスク」の作者が選ぶ作品集は予想通り教科書には載らないようなものも多かった。林芙美子や菊池寛など、そもそも手に取る気もおきない作家の作品もおかげで読むことができた。意外に菊池寛が面白…

石井妙子「女帝 小池百合子」文芸春秋(2020年4月)

話題の本を読んだ。小池さんは怖い人だと思っていたが、本当にそうだったのだなあと。これから4年もこの人を都知事として頂いて暮らしていく東京都民として、残念な気持ちになった。この本は小池さんのカイロ大学主席卒業という学歴詐称の話である。この嘘を…

浅野秀剛「浮世絵は語る」講談社現代新書(2010年)

浮世絵の考証の話だった。最初はどこに連れていかれるのやらと思って読み進めていたが、読み終えると浮世絵の楽しみ方が広がった気がした。いつ、どこで、誰を描いた作品かを考えることは、言われてみれば当たり前だが、当たり前を想像することもなく今まで…

丸谷才一「大きなお世話」文春文庫(1978年)

丸谷才一のエッセイ集。1970年前後に「アサヒグラフ」に掲載されたものを集めたもの。今からもう50年前のエッセイで、社会時評風なのでどうかなあと思ったが、時代変われど嘆きは同じ。丸谷才一の巧みな語りで面白く読んだ。当時の佐藤内閣のお粗末さを嘆く…

宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション下 文春文庫(初版2004年)

三冊シリーズの最終巻。読後感は一番重厚だった。やや長めの「生けるパスカル」。悪妻を持つ絵描きが妻を殺す話。悪妻ゆえに芸術性が高まるか。確かに不幸とアートは仲がいい。些細なことから破綻が始まり、クライマックスはあっという間にフィニッシュ。余…

宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション中 文春文庫(2004年初版)

宮部みゆき御推薦の松本清張の短篇集の2冊目。前半は悲しい女の話、後半は訳あり男の話。まさに私が思う松本清張の王道。加齢のおかげで世の中の悲哀が多少はわかるようになった。お姉ちゃんの旦那さんを愛してしまう妹の没落とか、騙されてひっそり死んでし…

宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短編コレクション上 文春文庫(2004年初版)

昭和の巨匠松本清張を読みだしたら、BSで松本清張のドラマが始まった。偶然というよりも、読んでいるから目に留まったのかもね。宮部みゆきが選んだ短編作品が上中下の3巻にまとめられている。宮部みゆきの前口上が効いていて、清張を知らない読者も巧みに誘…

陳舜臣「中国名言集 弥縫録」中公文庫(1986年初版)

最近、中国に興味がある。中国名言集とあるので読もうと思った。陳舜臣さんは神戸生まれで台湾の方だったらしい。タイトルの「弥縫(びほう)」という言葉は全然知らなかったし、読めなかった。難しい言葉も多いが、「五里霧中」「酒は百薬の長」など馴染み…

藤沢周平「闇の穴」新潮文庫(昭和60年初版)

通勤で読んでいたが、今はお風呂で読んでいる。困ったときの藤沢周平。馴染みの居酒屋のように、安心して楽しめる。短編集で今回はちょっと薄幸な話や、民話的な話が入っている。海坂藩モノとは違う味わいがある。変わらず市井の人々の感情を細やかに描いて…

柳宗悦「手仕事の日本」岩波文庫(1985年初版)

民芸の柳宗悦の日本の手仕事の本。昭和10年頃の日本の手仕事の状況を記している。北から南へ丁寧に辛辣に綴られている。芹沢銈介さんの挿し絵もあって分かりやすく楽しい。あれから90年ほど過ぎたわけだ。この中のどれくらいの手仕事が消えていってしまった…

橋本治「桃尻娘」講談社文庫 初版1981年

この題名の艶めかしさで当時は読まなかった。でも橋本治さんがお亡くなりになって手に取ってみた。面白くて、するする読めた。私の好み。もっと早く知っていればよかった。最近そういうことが多い。若いころは何をしていたのだろう。今から思うとつまらない…

日本史を読む 丸谷才一&山崎正和 中央公論文庫(1998年)

知的快楽本。背中のツボを押してもらったような心地良さが続く。博覧強記の二人が語る日本史話が実に面白くておもしろくて。こういう歴史話を少しでも聞かせてもらっていたら、もっと歴史好きになっていたかもしれない。自分の歴史教養の欠如を人のせいにす…

梅原猛「中世小説集」新潮文庫(1993年)

梅原猛さんが亡くなったのでこれも読んだ。読みやすい。するすると中世の説話の世界に吸い込まれる短編集。「首」は最後は血みどろの首が戦う、おどろおどろしい話だか、途中、鉄柱にしなだれかかった女が鉄の玉を生むという話など、なかなか色っぽくてぞく…

梅原猛「百人一語」新潮文庫1996年

先日亡くなった梅原猛の本を読んだ。100人の日本人の一言をテーマにそれぞれ3ページで簡潔にまとめられた話は、よく知る歴史上の人物から、聞いたこともない人まで、面白くまとめられている。無知な私にも読みやすい。どのページも、ひぇーと思うことばかり…

よしもとばなな「さきちゃんたちの夜」新文庫 2013年

私の周りにも「さきちゃん」がいるので買って読んだ。この本は「さきちゃん」が主役の短編集。5つの話全部にさきちゃんが出てくる。一番気にいったのは、豆のスープの話。老夫婦とその息子と離婚した奥さんと娘の咲ちゃん。離婚後、娘と一緒に、だんなの両…

井上ひさし「自家製 文章読本」初版昭和54年

井上ひさしを続けざまに読んでいる。面白い。日本語の広い知識と並々ならぬ愛情が好きなのかも。この本は、井上ひさしの言葉へのこだわりの源泉みたいな気がする。少々こだわり過ぎてついていけなくなった部分もあったけど。言葉を生業とする人の志の高さだ…

ペール・ヴァールー&マイ・シューヴァル著「笑う警官」(角川文庫1972年)

スウェーデンの警察小説。夫婦が共著で書いている。マルティン・ベックシリーズとして10作ほどあるらしい。そのひとつがこれ。ストックホルム郊外で2階建ての路線バスで殺人事件が起こる。その捜査の中心がマルティン・ベック刑事だ。北欧というと、ムーミン…

よしもとばな「ゆめみるハワイ」幻冬舎文庫2015年初版

ハワイ好きの友人から読んで欲しいと言われた。私がハワイ島在住の男性と知り合ったと告げたせいだ。ハワイ島のコナに住むその男性とはその後大した進展はない。近い将来私がハワイ島に行くかどうかは全くわからないが、「ゆめみるハワイ」はそんな曖昧さも…

井上ひさし「私家版 日本語文法」新潮文庫 初版昭和59年

井上ひさしの日本語の本。私家版なので、文法学者じゃないけど自由に物を言うぞとの宣言らしい。博識な井上ひさしのやや慇懃な物言いも面白いのでだんだん気にならなくなる。彼の言葉に対する貪欲な好奇心と繊細さに驚くばかり。言葉の底辺に流れる「自由平…

こだま「夫のちんぽが入らない」講談社文庫

話題の本が文庫本になっていた。予想していた話と全然違った。タイトルが衝撃的だったからその真相が知りたくて読み出した。真相はわからぬまま、違う話が展開。タイトルにダマされたとも思ったが、それはそれで面白い話でもあった。「ちんぽが入らない」な…

有吉佐和子「華岡青洲の妻」新潮文庫(初版昭和46年)

何度もテレビドラマや舞台になっている作品だが、原作の本を読むのは初めて。時代は江戸時代後半。場所は和歌山紀州。麻酔薬をつくり外科手術を可能にした麻酔医華岡青洲と、その母と嫁の壮絶な女の戦いの物語。いやあ濃い話。嫁にもなれず、息子も持たない…

遠藤周作「沈黙」 新潮文庫(初版昭和56年)

重いが面白かった。映画を見ているような感覚で一気に読んでしまった。江戸時代の初め、キリスト教が禁止された頃の話だ。それでもポルトガル人宣教師たちは、はるばる海を渡って日本にやってきた。やっとの思いで上陸した宣教師たち。信徒たちに保護されし…

陰影礼賛 谷崎潤一郎 中公文庫(昭和50年初版)

古い本を読んでいる。だが中身は古びていない。時代を越えて、耳元で谷崎潤一郎が話しているような、ちょっと奇跡的な感覚を持つ。電車の中では特にそう感じる。この本が書かれた昭和の初めは明るい時代ではなかった。今ならLEDライトが隅々まで照らすが…

井上ひさしほか著 文学の蔵編 井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 新潮文庫(平成14年)

井上ひさしが亡くなって8年。すっかり存在すら忘れていた。この本は一関で開いた彼の作文教室の文庫化。井上ひさしにちゃんと教えてもらえば、私もうまくなるかなと思って読み出した。作文教室は原稿用紙の使い方から始まった。知らないこともたくさんあった…

中野孝次 「ブリューゲルへの旅」 河出書房 1980年

昭和55年の文庫本。日本エッセイストクラブ賞を受賞。まだ多感だった頃に読んだはずだが、中身の記憶がない。感動した覚えだけがほんのり残っている。再読で記憶が少し蘇った。10代の私、なかなか頑張っていたのかも。昨年はブリューゲルの「バベルの塔…

広瀬浩二郎「目にみえない世界を歩く 「全盲」のフィールドワーク」平凡社新書(2017)

友だちに目の不自由な人がいるので買ってみた。著者は大阪にある国立民族博物館の学芸員。「触れる」展示に力を入れている。著者によると、そもそも視覚は一瞬のうちに大量の情報を伝えるパワフルな感覚らしい。そんなことに気付きもしない「見常者」は、視…

夏目漱石「草枕」岩波文庫

20歳までほとんど本を読まなかった。黙読が苦手だった。目で追っても頭に入らないのだ。仕方がないから声に出さないで音読する。読む速度はカメだが、今は読書が出来る。高校生の夏休みに読む新潮文庫の100冊系はほとんど読んでいない。夏目漱石も読んだのは…

丸谷才一「夜中の乾杯」文春文庫(1990年)

「まるやさいいち」の名前を知ったのは18歳のときだった。友達になった人が読書家で、好きな作家はと尋ねたら「まるやさいいち」だと言われたのが始まりだった。彼女の部屋は本が一杯並んでいた。ちょっと難しそうな本ばかりだったから、丸谷さんの本も私に…

三木清「人生論ノート」新潮文庫

人生も後半戦。下り坂に入り、三木清の「人生論ノート」を読んだ。昭和16(1941)年の本である。哲学者三木清が人生のいろいろなテーマについて語っている。難解さは少しあるが、短いので読めた。執筆時は治安維持法の時代。苦心して言葉を選んでいると後か…

磯田光一「永井荷風」(講談社学術文庫)

古い書棚から引っ張り出してきた色の変わった文庫本。「永井荷風」の評伝だった。荷風の生涯を、荷風の作品と時代、暮らしを丁寧に拾い出し、緻密に分析した一冊。荷風は裕福な家の長男として生まれ不自由なく育ち、若い時分はアメリカとフランスに渡ってい…