「李兎煥 Lee Ufan」国立新美術館

前から見たかったのだが、なぜ見たかったのかは思い出せない。最近忘却力がすごい。雨の国立新美術館は二科展のせいか、予想以上に騒騒しい。喧噪から一転して会場は静かな世界。リ・ウーファンは現代アートの人で韓国出身だが、日本での創作も長く、今では…

橋本治「青春つーのはなに?」集英社文庫(1991年)

今回の橋本治は前半が難解だった。途中から理解することを諦めたら、やはり橋本治はいいなあと思った。巻末の解説の中野翠さんを読んだ。なんだ、わかんないのは、私だけじゃないんだと知り、橋本治がまた好きになった。彼の本は、どこに連れて行かれるのか…

NHK夜ドラ「あなたのブツここにあります」

久しぶりの夜ドラヒット。先週は危うく泣きそうになった。大阪のキャバクラで働いていたシングルマザーのお姉さんがコロナで騙され困窮して宅配業界で働くお話。コロナを扱ったドラマはそう多くはないが、その中でもかなりの秀作だと思う。主演の仁村紗和ち…

佐藤勝「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」新潮社(2005年)

これもロシア関連本として読む。四半世紀前に、北方領土返還にむけて奔走していた鈴木宗男さんと佐藤勝さんがよくわからない容疑で捕まった話。そして当時、外務省でロシアの情報分析をしていた佐藤勝氏が、鈴木宗男氏をターゲットにする国策捜査について語…

日本TV「家庭教師のトラコ」

遊川和彦さんの脚本。彼の朝ドラは不評だったけど、私は彼のドラマが好きだ。今回はお気に入りの橋本愛ちゃんが主演。3人の母とその子どもたちを教える家庭教師のトラコ先生のお話。台詞の随所に、世の中、そんなに甘くないけど、ただ戦いもしないやつをオ…

「ルードヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡」 国立新美術館

毎日書道展を見に行った時に気になった展覧会。12時の回からの入場券だったが、余裕があったようで11時から入場できた。館内はちょうどいいくらいの人の入りで、一枚一枚ゆっくり見られ、最高の鑑賞空間。ケルンにある個人の収集家ルードヴィヒ夫妻が寄贈し…

TBS「石子と羽男 こんなコトで訴えます?」

初回見た時はしっくりこなかったが、回を重ねるごとに面白くなってきた。最初に感じた違和感は中村倫也のファッションからか、有村架純の演技の既視感かよくわからない。見れば見るほど心地よくなるのは、「拙いけど誠実がいいよね」を描いているからかもし…

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟1~5」亀山郁夫訳 光文社古典新訳文庫(2006)

人生で初めてのドストエフスキー。ようやく全5巻を読み終えた。マラソンでも走ったかのような達成感。読んでいる間は、濃密で緻密な話に、ドストエフスキーを生んだロシアの大地に思いを馳せた。ウクライナとの戦争が始まって、ロシアのことを知りたくて読ん…

PLAN75(2022)

75歳になったら自分の意志で死ぬことができる法律、「PLAN75」は、国の施策で、支度金10万円を貰って安楽死しましょうという国による高齢者削減プログラムだ。映画の最初の方に、75歳くらいの女性が、プラン75のパンフレットを持って相談にやってくる。「一…

NHKドラマ10「プリズム」

杉咲花ちゃんがうまいのでまた唸ってしまった。毎度違うタイプの役柄を巧みに演じている。今回はちょっと暗い女の子。中学の時に両親が離婚しているモラトリアムな女子。父の吉田栄作は実はゲイで今は東京で男性と暮らしている。母の若村真由美は、娘に過干…

フジテレビ「魔法のリノベ」

波留ちゃんが出ているのはだいたい見ている気がする。そこに間宮祥太朗君が出ているので、これは見なくてはならない。「リモラブ」もよかったな。間宮君はどんどんよくなって、今は匂い立つという感じ。そこに波留ちゃんの元カレ、ヤバイ男役に、金子大地。…

NHK-BSP「中森明菜スペシャルライブ2009横浜」

13年前の明菜ちゃんのカバーライブ。折れそうな細い肩を出した黒のノースリーブと紫のロングスカート。ストゥールに座りながら、フォーク、ニューミュージックの名曲を次々と歌う。選曲が渋すぎてびびる。1ミリも光がない。歌い方も息のこもったあの歌い方で…

フジテレビ「競争の番人」

お仕事シリーズのドラマ。今回は公正取引委員会のお仕事。主役は星野健太郎と杏。星野健太郎は変わり者のエリートが多いが、今回もその役。お父さんの恨みを抱えて権力と戦うみたい。もうすぐフランスに移住する杏ちゃん。警察から左遷されて公取委に配属に…

TBS「オールドルーキー」

この枠のドラマは苦手だ。中高年男性が喜びそうな展開をするからだ。トップガンマーベリックと同じ。主役の綾野剛くんが旬を過ぎたサッカー選手を演じる。引退してスポーツマネージメントの世界に入る不器用なスポーツマンが臥薪嘗胆して頑張るお話のようだ…

再開館を寿ぐ「三番叟」「二人袴」パルテノン多摩

野村万作、萬斎、裕基の野村親子3代揃っての狂言と舞の公演。三番叟は萬斎。二人袴を万作さん、裕基君が演じる。万作さんはなんと90歳の舞台。それがまた素晴らしい。まさに神。日本の宝、さすが人間国宝だ。動き、表情、居ずまい、孫裕基くんが演じる息子…

「トップガン マーベリック」(2022米)

私の年代の人なら見に行く映画。たまたまドルビーシネマだったけど、この映画ならその価値があるかも。お話は還暦の戦闘機乗りであるトムクルーズが年齢を感じさせない活躍でトップガンの若者たちと一緒にまだまだ頑張るって話である。還暦ファンタジー。ジ…

村田沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」朝日文庫(2015年初版)

同級生とご飯を食べていて話題にのぼった本。中学時代からの女友だちアルアル話から是非にとすすめられた。スクールカーストという言葉がない時代を生きてきたが、ヒエラルキーがなかったわけではなかった。この本は小学生から中学生に向かう少女たちのドロ…

柞刈湯葉「人間たちの話」ハヤカワ文庫(2022)

「ゆる言語学ラジオ」の堀元君が好きな作家だというので読んでみた。久しぶりに新しい本を読んだ興奮もあるが、大変面白かった。当たり前だが、古い本にはない「今」があった。短篇小説集で、どれもシニカルな視点とさらっとした読み心地がある。それなのに…

TBS「持続可能な恋ですか」

春ドラが特にどうというわけではない。ドラマについて書き続けているのは、私自身のアウトプット修行の一環なのだ。なるべく文章にまとめて頭の整理整頓、活性化につとめている。さて、このドラマは上野樹里主演のラブストーリー。だが、恋愛モノとしてはパ…

日本TV「悪女(わる)」

昔のドラマのリメイクだと最初は気がつかなかった。田中マリリンという主人公の名前と石田ひかりの登場回で記憶か一気に呼び戻された。前作はバブル景気の日本。今作は令和の閉塞感半端ない日本の一流企業が舞台。ちょっと変わった新入社員マリリンが騒動を…

テレビ朝日「未来への10カウント」

木村拓哉主演のドラマ。キムタクが出ているから、ジャニーズの若者も出ている。落ちぶれた元高校チャンピオンが母校のボクシング部を再建させる話のようだ。顧問の先生が満島ひかり。最近露出が激減していたが、久しぶりに見る満島ひかりは相変わらず魅力的…

フジTV「ナンバMG5 」

間宮祥太朗君が好きなので見始めた。ヤンキー一家難波家の次男が家族に内緒で普通の高校生の青春を送りたいと、ヤンキーと真面目な高校生の二重生活を送るコメディ。ヤンキー家族のパパが宇梶剛士、ママが鈴木紗理奈。兄は満島真之介。犬のマツはソフトバン…

NHKドラマ10「正直不動産」

山下智久君主演のドラマ。嘘つき不動産マンが、なぜか嘘がつけなくなってしまうコメディだ。山Pは美しくてチャラい。ちょっと冷たいのがよく似合う。男前にはコメディがいい。そんな山Pの上司役が、木下ほうかという俳優さんだったらしい。というのも放送…

NHKEテレ「バリバラ 女性障害者の体と性」

深夜の総合テレビでの再放送。以前からバリバラは、NHKで1番尖った番組だったが、今回も攻めていた。登場した女性障害者は皆さん車椅子を使っていた。彼女らが赤裸々に体と性について語っていた。最後に唯一の男性で司会の出演者が、出演して語ってくれた女…

今西錦司「生物の世界」講談社文庫(昭和47年初版)

生物学界のレジェンド今西錦司先生を読んだ。名前だけで実際のところは今西先生のことは良く知らないのだが、読んでみてその偉大さの片鱗には触れた気がした。とはいえ、私には難解な部分も多く、これまた読み進めるのに難儀した。それでも何とか読み終えて…

THE BATMAN(米2022)

バットマンは何回も映画化される。その最新作。3時間は長い。それでも悪い出来ではない。今回のバットマンも憂いがあって美しい。ミステリー仕立てで謎が解き明かされていく。相棒役の刑事がいるので、何だかシャーロックホームズ風でもある。キャットウー…

日高敏隆「動物にとって社会とはなにか」講談社学術文庫(昭和52年初版)

最初に読んだのは大学生の頃、一般教養の時間だった。昭和40年に出された本が52年に文庫本になって出てしばらくたってからだった。今からは半世紀以上前の本になる。学生の頃は「生物」に興味がなかった。人生は皮肉なもので、その後「生物学」を学ばねばな…

橋本治「愛の帆掛船」新潮文庫(平成元年)

面白くてあっという間に読み終えた。4つの愛のお話。どれもこれも濃厚で奇想天外、読んでいくうちに迷宮に連れて行かれる。その快感が強くて、しばらく忘れられない。橋本治さんも既にお亡くなりになっている。これまた生前は読んだ事がほとんどなく残念無…

瀬戸内晴美「嵯峨野日記」新潮文庫(昭和61年)

瀬戸内晴美さんのエッセイ集。出家して数年の作品らしい。出身の徳島の話や、得度した平泉の話、京都嵯峨野での日常やら、500ページをつらつら読んでいくと、作者の印象がすっかり変わってしまった。この人のこと、好きかもしれない、似ているところ多いかも…

「コーダあいのうた CODA」(米/カナダ/仏2021)

CODAとはろうあの親を持つ、聞こえる子どものこと。コーダの子どもは、幼い頃から親の通訳をして、聞こえない世界と、聞こえる世界の橋渡しをしている。この映画の主人公がコーダ。彼女は、家族の誰も知らないが、素晴らしい歌声を持っていると言う話。お話…