瀬戸内晴美「嵯峨野日記」新潮文庫(昭和61年)

瀬戸内晴美さんのエッセイ集。出家して数年の作品らしい。出身の徳島の話や、得度した平泉の話、京都嵯峨野での日常やら、500ページをつらつら読んでいくと、作者の印象がすっかり変わってしまった。この人のこと、好きかもしれない、似ているところ多いかも…

「コーダあいのうた CODA」(米/カナダ/仏2021)

CODAとはろうあの親を持つ、聞こえる子どものこと。コーダの子どもは、幼い頃から親の通訳をして、聞こえない世界と、聞こえる世界の橋渡しをしている。この映画の主人公がコーダ。彼女は、家族の誰も知らないが、素晴らしい歌声を持っていると言う話。お話…

瀬戸内寂聴「幻花(上&下)」集英社文庫(昭和54年)

瀬戸内晴美の歴史ロマン。仏門に入られてすぐの作品で、今から45年ほど前の作品かな。室町足利義政将軍と、愛妾今参局と御台所日野富子が主な主役。下剋上から応仁の乱に至る話である。お話は現代から始まり、銀閣寺のお月見で見つけた古文書から一気に室町…

フジTV土ドラ「おいハンサム」

土曜の深夜のドラマ。東海TVが作っている。この枠は時々とてもいい。鈴木保奈美「ノンママ白書」や大地真央「最高のオバハン」も良かった。今回は娘3人の父が吉田鋼太郎で、奥さんがMEGUMIのホームドラマ風のお話。娘は上から木南晴夏、佐久間由衣、武田玲奈…

瀬戸内寂聴「私の京都 小説の旅」新潮文庫(平成7年初版)

昨年お亡くなりになった瀬戸内寂聴さんを読む。生前はほとんど読んでいなかった。一冊だけ読んだ本がなまめかしかった記憶がありずっと遠ざかったいた。ちょうど今年はお正月過ぎに京都を訪れたこともあり、気分新たに手に取った。この本は、作者が京都を舞…

立花隆「立花隆・100億年の旅」朝日文庫(2002年)

朝日系の雑誌の連載をまとめたもの。サイエンス・ナウと同じ、科学の最前線の研究室をおとずれて、その概要をまとめたもの。20年前の話だから、その後、大きく進展したものもあったし、そうではなさそうなのもあった。当時も呑気な若者だったから、日本の科…

立花隆「宇宙からの帰還」中央公論社(1983年初版)

この本は立花隆の追悼企画でも紹介されていたので期待して読んだ。期待通り面白くて一気に読んだ。すっかり忘れていたが、その昔、世界は冷戦状態にあり、西側と東側は敵対し睨み合っていた。ソビエトとアメリカの宇宙探索への競争はソビエトが当初はかなり…

立花隆「脳死」中央公論社(昭和61年)

立花隆の本を読む。亡くなると偉大な作家は特集される。その特集ではじめて私はその存在と偉業を知るのだが、多くの人が認める本にはハズレがない。この本はタイトル通り脳死の話がぎっちり。なかなか体力のいる本である。今から四半世紀前の本だから、その…

NHKよるドラ「恋せぬふたり」

岸井ゆきのが良い。高橋一生が出ているから見始めたが、今はふたりに引き込まれている。恋愛やエロスを感じない人たち、感じたくない人たちのお話で、恋はしなくても寄り添いあって、幸せに生きてもいいのではないのかと問いかけるドラマ。見ていると、いつ…

立花隆「ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術」文春文庫(2003年)

「知の巨人」立花隆の簡単書評本である。その前後に、彼の大量読書術と速読術の披露、最後は「『捨てる』技術」という当時の人気本を一刀両断している。立花隆は、彼がこの世を去ってから読んでいるわけだが、難しいことを分かりやすく面白く書く技術が卓越…

林真理子「ルンルンを買っておうちに帰ろう」角川文庫(昭和60年初版)

林真理子の出世作。以前読んだかもしれないが、また読んだ。面白かった。今では林真理子は大作家先生。文学賞の審査員だし、大河ドラマの原作者だし、話題の「8050問題」の本も書いている。今では大御所の林真理子だが、その昔はとても面白いお姉さんだ…

東京バレエ団 子どものためのバレエ「ドン・キホーテの夢」横浜関内ホール

友人のお嬢さんが出演されているので見に行った。新型コロナウィルスの第6波で感染者激増だが開催。空席がまばらにあるのは、観客数を減らしているのかもしれない。子どものためのバレエで、オープニングにセリフを入れての説明があった。わかりやすいので、…

日TV「恋です! ヤンキー君と白杖ガール」

杉咲花ちゃんが弱視の女の子を演じるラブコメ。視覚障害を持つ人の暮らしがドラマを通して少し分かったような気がする。毎回登場する全盲のお笑い芸人さんの、「どっちかわからんかったら、わろといて下さい」も好き。ドラマはそこそこいい加減さを含んでい…

NHK朝ドラ「カムカムエブリバディ」

大好きな脚本家藤本有紀さんの朝ドラだから朝から幸せだ。それにしても上白石萌音ちゃん。本当に小さくて、顔もスタイルも全然今どきじゃないのでけど、限りなくかわいくて切ない。「恋は続くよ」の時もまんまと引きずりこまれたけど今回も凄い。和菓子屋の…

小林秀雄「本居宣長(上)(下)」新潮文庫(平成4年)

上下巻2冊をやっと読み終えた。小林秀雄なんて無理だと思っていたが、一生読まないで終えるのも悲しいので、最後のチャンスと手に取った。引用がとても多くて、読み進めるのに難儀した。だが、少しずつ読めば何とか最後にはゴールに辿り着けるものだ。マラソ…

阿刀田高「殺し文句の研究」新潮文庫(平成17年)

阿刀田高さんのエッセイ集。比較的若い頃の作品が詰まっている。作品目録が巻末についている。売れっ子作家の阿刀田高さんは国会図書館勤務経験者。サラリーマン生活を経験しているせいか、読み手のすぐ近くにいる普通の人だという印象がある。重くならず、…

佐藤愛子「九十八歳。戦いやまず 日は暮れず」小学館(2021年)

話題の本だったが、手に取ったのは初めて。佐藤愛子さんは今年で98歳なんだ。まさに生涯現役。女性セブンに連載しているものをまとめたらしい。字が大きい。98歳になろうとする作家の語る話はリアリティがある。老いを恐れてジタバタする時代もとっくに過ぎ…

ドライブ・マイ・カー(2021年)

やっと見に行くことができた。見られて良かった。3時間の長尺だが、もう一回見たい気もする。主演は西島秀俊。演劇の役者兼演出家の家福さんを演ずる。愛車サアブは赤くて多摩ナンバー。車が終始登場するこの映画、赤いサアブも重要な出演者だ。その車を運…

ヘミングウェイ短編集(一)大久保康夫訳 新潮文庫(昭和45年初版)

ヘミングウェイは大学の英語の授業で読んだことがある。当時、田舎の大学へ神戸から通っていた美人の先生は、ヘミングウェイなら、私たちでも読めると踏んだのだろう。「インディアン部落」はそのとき読んだ記憶がある。「キリマンジャロの雪」は、アフリカ…

立花隆「サイエンス・ナウ」朝日文庫(1996年)

「科学朝日」に連載中だったのが、1989年だったとすると、これは今から32年前の「サイエンス・ナウ」である。30年前の科学の最前線の研究を立花隆が紹介している本である。科学の研究自体は素人には難しすぎてよくわからないのだが、立花隆が非常にわかりや…

立花隆「マザーネイチャーズ・トーク」新潮文庫(平成8年)

先日お亡くなりになった立花隆さん。文春で特集されていたので読んでみた。この本は雑誌に連載された対談集をまとめたもの。今から25年前の本。対談相手がまた一流の方々で、その中で、河合雅雄さん、日高敏隆さん、多田富雄さん、河合隼雄さんは私も知って…

星新一「宇宙のあいさつ」ハヤカワ文庫(昭和48年初版)

この本もショートショート。これが一番気に入った。やっと星新一に慣れたのかもしれない。慣れる前に諦めなくて良かった。多少の我慢が悦楽への道。大きく飛ぶ前は低くしずむだ。世の中の事象は見方を変えれば、悲劇は喜劇で、その逆もあり。とかく自分の不…

星新一「悪魔のいる天国」新潮文庫(昭和50年初版)

ショート・ショートの作品集。星新一といえばこれ。題名が示す通り、毒が聞いてて、読み終えるたびに、シャキッとした気持ちになる。このクールな眼差しが魅力なのだが、私はもう少し湿気があるのが好きだ。イラストが内容にピッタリで、どこかすっとぼけた…

「竜とそばかすの姫」(2021年)

細田守監督の新作。今回もまあまあ。彼の映画は、絵、特に色彩が好きだ。今回は幼くして母親を失って、歌が歌えなくなった少女すずが歌い出すというお話。仮想現実のUという世界で、すずはアバターのBELLになる。BELLは歌える。素晴らしい歌声であっという間…

星新一「宇宙の声」角川文庫(昭和51年初版)

星新一を連続して読んでいる。この本は昭和44年に単行本で発表されたものの文庫版である。少年少女が日常からいきなり宇宙へと飛び出し冒険する話。今から50年前の作品だが、古びた印象はなく、唐突だが自然に宇宙話へと展開するあたり見事だと思う。今でも…

星新一「人民は弱し官吏は強し」角川文庫(昭和46年初版)

読み終えて、星新一のお父さんの話だったことを知る。びっくりしたが、納得した。ショートショートを読むつもりもだったので、最初困惑したのだが、すぐに引き込まれて一気に読んだ。大正時代に苦学してアメリカの大学を出て、日本で製薬会社を作った男、星…

東京バレエ団 子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」めぐろパーシモンホール

友人のお嬢さんが出演するというので見に行った。目黒区にある東京バレエ団が毎年行っている夏のイベントらしい。子ども向けとあって客席にはたくさんのお嬢ちゃんとママがいる。始まってすぐに泣きだす子どもがいたりして、お母さんは大変である。平身低頭…

阿刀田高「ギリシア神話を知っていまか」新潮文庫(昭和59年初版)

昔読んだはずだが、何一つ覚えていなかった。面白かったという記憶がある。今回読んでもやはり面白かったし、内容ももう思い出せない。何ということだろう。作者の名前はてっきりペンネームかと思っていたが、本名らしい。珍名字の阿刀田さんのギリシャ神話…

シェークスピア・中野良夫訳「ロミオとジュリエット」新潮文庫(昭和26年初版)

古い文庫本。値段は200円。はじめて買ってもらった文庫本かも。ただ読んでなかった。当時は難しくて読めなかった。有名な戯作だから、舞台や映画では何度も見ている。戯作を読むのはまた違った味わいがあった。訳者が最後に、マキューシオと乳母の人物像の描…

諸井薫「男女の機微」中公文庫(1989年)

バブル期の本をまた読む。諸井薫さんは出版社の編集者だったようだ。名前は小説を書くときのペンネームらしい。今世紀初めにはお亡くなりなっている。30年前のこの本を読むと、いかに時代が変わったかがよくわかる。雑誌の編集者といえば、当時の最先端の職…